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備忘録として日記を書いています。

夏の思い出 2021

私は大学生のころから一人暮らしをしている。

一人暮らし歴で言うとだいぶ長い。

だが一人暮らしを始めて20年近くたって今年の夏初めて起こったことがある。

もう2か月くらい前の8月の話だが書き留めておこうと思う。

 

部屋にセミが入ってきた。

 

いつどうやって入ってきたのかわからない。

買い物から帰ってきて、買ったものを冷蔵庫に入れているときにかすかな羽音が聞こえた。

もしかしてGなのではないかという予想が脳裏をよぎった。

壁を見るとそこにはセミがいた。

逃げた。

見なかったことにした。

 

私はセミとGが嫌いだ。

大人がこんなに嫌がるかと思うくらい嫌いだ。

 

しかし目を離した隙にセミがどこにいるかわからなくなるのが一番怖い。

ホラー映画でよくある急に現れるやつをされる。

いきなり目の前に現れたら半狂乱になる自信がある。

なので位置を把握しつつどう対処するか考えないといけない。

 

Yahoo知恵袋に同じような境遇の人の投稿が残されていた。

頼りになるのは先人の知恵である。

セミ素手で捕まえることなどできないし、捕まえる道具もない。

殺虫スプレーなどを使ったら処理をしないといけない。

いくつかある対処方法の中で、素手で触る必要がなく、できれば生きたまま逃がす方法がないか探した。

布で包んで逃がすという案があった。

これだと思った。

 

しかしセミは壁のけっこう高い位置にいた。

背が届かないのでどうすることもできない。

そうしてじっとセミを見ていた。

 

飛んだ。

狭いワンルームの中をセミがいろんなところにバチバチと当たりながら飛び回った。

私はただただ震えて何かに祈った。ゲームでいうMPがどんどんすり減っていくのがわかった。これが精神攻撃なんだなと思った。地獄の時間だった。

 

ついに体力を消耗したのかセミが地面に落ちた。

私はいらなくなった布を残り僅かな精神力を振り絞ってかぶせた。

そして包んでつかみ、セミだけを外に出すことに成功した。

 

一番長い夏の一日だった。

 

よく考えたらセミは部屋の中では一回も鳴かなかった。

それだけが救いだった。